◆アートを楽しみながら知るインド◆
森美術館ゲストキュレーター
三木あき子

1年以上にわたってインドでのリサーチを重ね、数多くの作家と会ってきました。その中から27組の作家を選りすぐり、それぞれの作家の代表作や新作、100点以上の質の高い作品を展示します。90年代の経済自由化やグローバル化に伴い、自分たちの身の回りの事物や環境に眼を向け、手法が多様化するというアートの傾向はアジア全体に広がりましたが、インドでそれが顕著になってきたのは2000年代に入ってからです。そこで「変容する社会」と「新しい時代」をポイントに、1980年代から先駆的に活躍している作家から若手まで、インドの多様性を示す内容としました。
展覧会は5つのセクションに分かれています。まず、「プロローグ:さまざまな旅へ」では、巨大な眠っているような象が出迎えます。他にも、私たちがインドに対して描いているイメージ通りのモチーフを使った作品が多いのですが、よく見ると、その既成概念を覆されるような、奥の深さを感じていただけるでしょう。次の「創造と破壊:都市の風景」は、現代の混沌とした都市の風景を体感するようなセクションです。「反射:両極の間で」に入ると、路上から迷宮へ。映像やメディア系の体験型の作品を多く展示しています。「豊穣なカオス」のセクションでは一転して、インドの人々の日常を垣間見るような、カラフルでキッチュ、きわめて現代的な作品や、伝統文化に根ざしつつ変容する社会への示唆を含む繊細な作品、あるいは人間と動物の関係を考えさせられるような作品が並びます。そして「エピローグ:個と集団/記憶と未来」では、アートの枠組みに縛られず、新しい方向性を見せる若い作家たちに焦点を当てます。
こんな作品もインドにあるんだ、という驚きとともに、さまざまな表現の中から、インドの変化やそれに伴う問題、そしてインドの人たちはこういうことを考えているのか、ということに触れる。インドのアートを楽しみながら、インドの今を知る。展覧会がそんなきっかけになれば嬉しいです。